裏拍先行と表拍先行の本質
裏拍が先行する感覚と表拍が先行する感覚の違いを「動き」で説明する
1. 身体の動きを使ってリズム感覚を説明する
人が動いている車を避けようとする行動を例に挙げると、裏拍が先行する感覚(backbeat-leading sense) と 表拍が先行する感覚(downbeat-leading sense) の違いを明確に理解できる。ここで、車が左側から現れて右方向へと速く走り抜けていく場面を考える。
2. 衝突する人と衝突しない人の動きの違い
● 衝突する人(表拍が先行する感覚)の場合:
衝突する傾向のある人は、単純にその時点の車の位置だけを基準に状況を判断する。現在、車が自分の左側にいるのを見て、本能的に右側へ避けようとする。しかし、車はその人が思う以上に速く右側へ移動しているため、その人が右に移動した瞬間にちょうど車の進行経路に入ってしまい、衝突を起こしてしまう。
● 衝突しない人(裏拍が先行する感覚)の場合:
一方、衝突を避ける人は、現在の車の位置を見るだけでなく、車が次にどこへ動くのかという未来の位置を予測して行動する。最初は直感に反するように見えるかもしれないが、この人は、あえて車が現在いる左側に移動する。なぜなら、この人がその地点に到達する頃には、車はすでに右側へと走り去っているため、左側への移動がむしろ安全になるからだ。このように車の軌道を正確に予測することによって、この人は衝突を回避することができる。
3. 表拍が先行する感覚の特徴
表拍が先行する感覚を持つ人は、すでに起こったこと(前の拍)に注意を向ける。彼らは、すでに観察した過去の拍を基準に、そこから一定の時間を測った後で自分の拍を演奏しようとする。そのため、時間感覚としては常に基準となる出来事の「後ろ」に位置している。
しかし現実の音楽演奏では、テンポは自然に揺れ動くものである。過去の拍から正確に一定間隔を測ったとしても、それが次の拍の位置と正確に一致するとは限らない。したがって表拍が先行する感覚の人は、一般的に一定したテンポを維持することが難しい。
4. 裏拍が先行する感覚の特徴
裏拍が先行する感覚を持つ人は、過去に起きた出来事を観察し、それを基にして次に起こること(次の拍)を予測する。彼らは次の拍の位置を予測して前もって自分の拍を準備し、常に自分の認識する時間軸のなかで基準となる出来事よりも「前」に位置している。
実際の音楽演奏においてテンポが常に揺れ動いていても、裏拍が先行する感覚を持つ人は、予測した拍の位置と実際に起きた拍の位置を絶えず比較することで、自分のタイミングを微調整することができる。このような継続的な予測と調整により、安定した一定のテンポを維持することが可能となる。
表拍裏拍は、必ずしも4分音符の1系統しかない訳ではありません。8分音符で見た時にも、奇数拍は表拍で、偶数拍は裏拍です。この様に複数の音価で複数の系統の表拍裏拍が常に同時に存在します。